【専門部会3】サルコペニア研究専門部会

サルコペニア(sarcopenia)とは、加齢に伴って筋量や筋機能が低下する現象です。その罹患率は男女ともに60歳を境に急激に増加することが明らかになりました。高齢化社会を迎えた我が国では、サルコペニアによる「要支援・要介護」認定者は年々増加する一方であり、自治体としても深刻な状況を迎えると予想しており今後の介護保険料や医療費負担のさらなる増加が危惧されています。また、社会においてもスポーツクラブなどでは高齢者の会員増加に伴い高齢者に対する運動プログラムの作成に戸惑いが起きており苦慮している現実が表面化しています。 また、予防医学的見地からも研究者を増やし取り組むことは本学会の趣旨でもあり、今後の重要な取り組みと位置付けています。
サルコペニア研究専門部会は、サルコペニアを主因とする身体機能障害の予防や改善策を学術的に検証し、その知見から得られた具体的な方法やデバイスの開発・普及を目指すことをテーマとして開設されました。この専門部会が、サルコペニア研究分野の発展と高齢者の自立生活を維持する健康長寿の一助になれば幸いです。

 サルコペニアとは

老化の過程で起こる、からだの重大な変化のひとつに、骨格筋量の減少があります。この変化は体力や身体機能の低下を招き、日常生活に重大な影響を与えます。
1989年、米国タフス大学のRosenberg(ローゼンバーグ教授)は、加齢に伴って無意識のうちに起こる骨格筋量の減少を『サルコペニア』と命名しました。
『サルコペニア』は、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx」と、喪失を意味する「penia」からなる造語です。
Rosenbergが命名した『サルコペニア』の定義は、加齢に伴う骨格筋量の減少です。この定義に従えば、スポーツや運動を実践している健康な高齢アスリートであっても、すべての高齢者が
例外なくサルコペニアに該当してしまいます。したがって、加齢に伴う筋量の減少は、若い時よりも筋量が減ったかどうかではなく、筋量がある一定基準以下に減少してしまったか否かにな
ります。
1998年、Baumgartnerらは、若年者の筋量の平均値と標準偏差を使って、平均値から2倍の標準偏差を引いた値を算出し、その値よりも低い高齢者をサルコペニアと定義しました。この概念は、その後の研究でも利用されていますが、幾つかの問題点も指摘されています。
このように、現在でも、サルコペニアという現象を明確にとらえた定義は、確立されていません。
2010年、「高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループ」は、サルコペニアに関する実用的な定義を提案しました。その定義については、後ほど詳しく説明します。
現在、『サルコペニア』に関連する研究は爆発的に増加し、最近では年間に約1000編の論文が公表されています。